「列車」 レイモンド・カーヴァー

暗い。怖い。辛い。

『列車』(原題:The Train)は、短編集「大聖堂」に収められたカーヴァー円熟期の短編であり、ジョン・チーヴァーに捧げられている。チーヴァーは1912年生まれの米国人作家で、映画化された『泳ぐ人』などで知られている短編の名手だ。カーヴァーは38年生まれなので年齢差はあるが、一時期飲み友達としてかなり親しかったらしい。

この『列車』は、チーヴァーの代表作の一つ『五時四十八分発』という短編の続編として書かれた。『五時四十八分発』の直後から話は始まる。夜遅くに駅の待合室で列車を待っている三人の人物を描いただけの奇妙な話である。『列車』より『待合室』というタイトルの方がしっくりくるくらい、舞台はほぼ待合室。ミス・デントという若い女性、洒落者の老紳士と彼の連れのイタリア系女性、そこへ来るまでに何があったのか詳しくは語られないが、それぞれが問題を抱えている。少ない言葉から読者は推測するしかない。

それにしてもこの短編、希望の欠片もない。まったく光がない。絶望という表現がまさにぴったりで、幸せから最も遠く離れた場所であるかのように温もりがない世界である。チーヴァーへのオマージュ作品であるので、都会的で洒落た作風のチーヴァーが抱えていた闇を表現したのかもしれないが、こういう話を書いている時の精神状態を想像するとゾッとする。私には絶対に無理、とても耐えられそうにない。

チーヴァーとシンクロする心の闇があったと思うといたたまれなくなってくる。「」の時にも感じたが、カーヴァーはいつも辛そうだ。これでは、とても長生きできるはずがない。。。

大聖堂 (村上春樹翻訳ライブラリー)

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