『そいつらはお前の亭主じゃない』 レイモンド・カーヴァー

それにしてもカーヴァーっぽいタイトルでしょ。(原題:They’re Not Your Husband) こうした意味不明さにはもう慣れるしかない。ちなみに、『そいつらはお前の亭主じゃない』はロバート・アルトマンの映画『ショート・カッツ』にも取り入れられている。

主人公は失業しているセールスマンの男。(セールスマンというのがポイント) 彼は、妻がウェイトレスとして働く夜のカフェへ客として行く。他の男性客が妻の体形を笑っているのを聞き、ダイエットするよう促す。妻は減量に成功する。スタイルの良くなった妻を見せびらかしたくて、男はのこのこカフェへ出掛け愚行を重ねる。

いつものことだが奇妙な設定の話だ。

この主人公の男は、どうしようもないくらい幼稚でふがいない。コミカルでライトな笑い話としても読めるが、とにかく情けないったらありゃしない。家計を支えているのは妻の方だし、夜にふらふら外出して子供たちの面倒もろくに見ていない。妻の外見ばかり気にしていて、人として芯というものがない。

セールスマンというのがポイントと書いたが、世の中の声を受けて妻を売れる商品へと改良するセールスマンという見方もできなくはない。(マーケティング→商品改良→販促活動) まあ、そうだとしても形骸化してしまった虚しい夫婦であることには変わりはないが。

でも、ここまでダメ男だと同化の対象にもならないし、反面教師にもならない。短編小説としては充分に面白いけれど。

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