カーヴァー短編ベスト5

レイモンド・カーヴァーの短編ベスト5を選んでみた。『あなた、お医者さま?』や『ナイト・スクール』が入っているあたり、個人的な好みが色濃いものになっているかと思う。

以前、カーヴァーをネガティブと捉えて敬遠していた時期があった。でも、それは浅はかな解釈で、今はもっとも誠実でもっとも力強い作家だと確信している。ヘミングウェイ、カポーティ、サリンジャーより、今の私にとっては近くて重要な存在だ。

正直、5作に絞るのにかなり苦労した。『収集』『隣人』『メヌード』『轡』『深刻な話』『私にはどんな小さなものも見えた』『象』『シェフの家』についてはどれを入れても良かった。

第5位 『ナイト・スクール』

妻も職もクルマも失った男がバーでひとり、なけなしの金でビールを飲んでいると、二人組の中年女性が話しかけてきた。取るに足らないエピソートだが、骨太でラギッドで魅力に溢れている。

第4位 『ぼくが電話をかけている場所』

世間から絶たれた空間に身を置くことで、当たり前の日常がいかに尊いかを知る。アルコール中毒療養所が舞台の、リアリティあふれる名短編。

第3位 『足もとに流れる深い川』

夫は少女の水死体を発見したにも関わらず、警察に連絡せずにキャンプを続け、酒とカードゲームに興じていた。損なわれていく夫婦。損なわれていく日常。短編小説に対する熱意と技術の凄みがこの作品の中に詰まっている。

第2位 『あなた、お医者さま?』

遅い時間に鳴り響く電話の着信ベル。知らない女性からの不可解な問い合わせ。そして二人は会うことに。全文模写したくなるほどに魅力的な短編だ。

第1位 『熱』

一生添い遂げると信じていた妻に逃げられた高校の美術教師。ベビーシッター探しにも四苦八苦。人生の一つの章の終わりを描いた短編で、私の中で深く心に残る傑作。エンディングも素晴らしい。

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