ヘミングウェイが学んだ執筆ルール

ヘミングウェイが学んだ執筆ルール

1899年生まれのヘミングウェイは、高校卒業後の1917年10月にカンザスシティ・スター紙の見習い記者になっている。そこで、「スター紙の記者として、このスタイルシートに記載された執筆ルールをしっかり頭に叩き込むように!」と文章表現に関する手引きを与えられた。後にヘミングウェイはこのスタイルシートについてこう語っている。

“the best rules I ever learned in the business of writing.”

執筆の仕事に於いて、私が学んだ最良のルール

当時のものとかなり内容的に近いと言われる1915年頃のスタイルシートを下記でダウンロードできるので、興味のある方は一読してみてほしい。

The Kansas City Star Style Guide

 

重点を挙げるなら

・短い文を使うこと。最初の節は短くすること。

・力強い英語を使うこと。

・否定的でなく、肯定的に表現すること。

といった感じ。

「力強い英語」とここでは訳しているが、原文はvigorous Englishで、「快活な」というニュアンスかもしれない。

 

このスタイルシート、割と細かい英文法の注意事項が多いので日本人にはピンと来ない部分も多い。

例えば

Say Mary went shopping with Mabel – not “in company with Mabel”.

「メアリはマーベルと買い物に行きました」と書くこと。「マーベルと一緒に買い物に行きました」はダメです。

とか

“None saw him except me,” not “none saw him but me.” Don’t use but as a preposition.

「私以外は彼を見ませんでした」などと書く時、前置詞に”but”を使用しないこと。

とか

“He threw the stone,” not “He threw the rock.” Rock is unquarried stone.

 「彼は石を投げました」と書くこと。「彼は岩を投げました」はダメ、rockは採掘されていない岩のことですから。

てな感じで、文法や簡素化のガイドラインが記されている。ややこしい細かな規則に映るかもしれないが、日本の企業が定めている表記ルールはもっと複雑でボリュームがあったりするので、個人的には「これだけ?」と思った。

Avoid the use of adjectives, especially such extravagant ones as splendid, gorgeous, grand,magnificent, etc.

形容詞に関しては、「素晴らしい」や「壮大な」といった大袈裟な言葉の使用を控えるようにと注意喚起している。

「彼はとても立派な身なりで人柄も素晴らしかった」みたいな文章はNGということだ。ジャーナリズムに於いて主観的で具体性のない表現を嫌うのは当然だろうが、大袈裟な形容詞が多いと知性も疑われてしまう。「マジでスゲェ、やべぇ、神だわ」は馬鹿っぽいでしょ。

結論:

100年を経ても劣化しないヘミングウェイの「滅びない文章」は、カンザスシティ・スター紙のスタイルシートに起因している。

「ファイター」 アーネスト・ヘミングウェイ

『The Battler』 アーネスト・ヘミングウェイ