ヘミングウェイ全短編2『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪』に収録されている全17作品をひとことで斬っていこうと思う。今回ももちろんストーリー紹介はなし。辛辣なことも書いているが、おおらかな気持ちで読んでいただきたい。
『嵐のあとで』☆☆
荒れた海、難破船、お宝の略奪。印象的な映像が頭に浮かぶのだが、グッとくるものがない。(残念!)
『清潔で、とても明るいところ』☆☆☆☆☆
ヘミングウェイの短編の頂点。何百回読み直しても沁みる。この短編を退屈と思う人とは友だちになれない気がする。
『世の光』☆☆☆☆
どこか非現実的な宗教的ムードが漂っており、深い余韻が残る。締めの一文も実に印象的。
『神よ、男たちを楽しくい憩わしめたまえ』☆☆
この話、まったく記憶に残っていない。多分、ちゃちゃっと簡単に書いたのだと思う。エビデンスはないけど、なんとなくそう思う。
『海の変化』☆☆☆
男女の会話だけで巧妙に行間を読ませる。ヘミングウェイの技が冴えている大人の短編。
『最前線』☆☆☆
精神が鬱々してくる重苦しい話だが、これをヘミングウェイは陽光降り注ぐフロリダで書いたという。どういう情緒?
『オカマ野郎の母親』☆☆
ろくでなしのゲイの闘牛士の話なのだが、どうしてこれを書きたかったのか謎。個人的な感情の捌け口なのかな。
『ある新聞記者の手紙』☆☆
他の短編とは趣の異なるペーソスを感じるが、あまり熱量を感じない。正直なところ、退屈。
『スイス賛歌』☆☆☆☆
アイデアがとても面白い。実験的な短編ではあるが、ゆったりと心地好い読書を愉しめる。
『死ぬかと思って』☆☆☆☆
インフルエンザに罹った少年とその父親の話。どこかせつなくて、懐かしい静寂があって、とにかく完成度が高い。
『死者の博物誌』☆
ディスられてキレて、反撃(復讐?)のために書いた小説かな。そういう精神状態から良いものは生まれない。マインドフルネスが必要だと思う。
『ワイオミングのワイン』☆☆☆☆
カトリック、移民、禁酒法時代の酒場といった当時のアメリカの弱者に寄り添った短編。何でもない会話で構成されているが、これが味わい深くて良い。
『ギャンブラーと尼僧とラジオ』☆☆
いまひとつピンと来るものがない。よくわからないし、☆を何個にしたらよいかもわからない。。。
『父と子』☆☆
著者自身の父親への複雑な思いがそのまま作品に出てしまったのかな。もやもや感が残る。
『世界の首都』☆☆☆☆☆
短編の神様が降臨したとしか思えない最高の一編!
『フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』☆☆☆
アフリカでのライオン狩りを題材にした短編だが、あまり気持ちの良い読書にはならない。
『キリマンジャロの雪』☆☆
題名の魅力からか過大評価されている。大人になれないヘミングウェイが暴走。憎悪の感情が露骨で深みに欠ける。