「汽車の旅」 アーネスト・ヘミングウェイ

生前未発表の短編で、原題はA Train Trip。未発表と聞くと「駄作だろ」と思いがちだが、とてもクオリティが高く、何度も読み返したいと思える一篇だ。

さまざな試練や体験を通して、ひとりの少年が「生きるとは何か」に目覚めていく。いかにもヘミングウェイらしい主題だと思う。

本短編では、「僕の父」や「父と子」と同様に父親と息子の交流が描かれている。

理由は書かれていないが、二人は愛着ある家を出ていくことになる。屋根に登り、風景を目に焼き付ける。そして二人はシカゴ行きの汽車に乗る。その車内で護送中の殺人犯が逃亡を図る場面に遭遇し、血みどろの現場を少年は目の当たりにする。

淡々としたペースで、子どもが目にしたものや父とのちょっとした会話の描写がつづく。ブチッと切れたような突然のエンディングには疑問が残るが、おそらくこの短編は未完なのだろう。。。(勉強不足は自覚しているが、海外のサイトを調べる時間が今はない)

いずれにしてもとても良質な短編で、訳者の高見浩氏は後書きで「みずみずしいイニシエーションの物語」と賞している。

最初に父と二人で食べたのがチキン・ポットパイ。ぼくはそれからコップ一杯の牛乳を飲み、アイスクリームの添えられたブルーベリー・パイを食べた。

ストーリーに直接関係ないこういう描写がとても素敵だ。結論を急がず、一定のペースで丁寧に綴っていく。暴力的なシーンはあるものの、ヘミングウェイを読む愉しさや心地好さを堪能できる魅力的な短編だと思う。

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