「アフリカ物語」 アーネスト・ヘミングウェイ

原題は、An African Story。元々は長編「エデンの園」の作中作で、デイヴィッドという少年を主人公にした成長へのイニシエーションの物語だ。象牙のために巨象を狩る大人たちへの嫌悪や、そこに加担してしまった罪の意識や自己嫌悪が描かれている。

「エデンの園」が出てくると話はどうしても不明瞭にならざる得ない。この長編はヘミングウェイが50歳前後に書いたといわれているが、実際に世に出たのは死後25年くらいが過ぎてから。遺された膨大な原稿を、出版社の独断でなんと3分の2も削り、しかも切った貼ったなど手を加えたという。丸ごと削除された登場人物までいたりして、もはや誰の作品かさえよくわからなくなってしまった。しかもこの長編、奇妙な三角関係を性的に描いており、その点でも賛否両論を呼ぶ問題作であった。

映画化もされていて予告がこれ↓

「アフリカ物語」は独立した短編でなく、前述したようなややこしい長編に組み込まれた作中作であるため、どう読めばよいのかわかりにくい。バージョンも複数あるらしいし。

まあ、なにも気にせず一つの短編として読むなら、なかなか臨場感もあり、アフリカのリアルが目に浮かぶ。罪のない象を殺す話なので残酷なシーンは多く爽やかな読書にはならないが、一流のダイナミックな文学の匂いも愉しめる。

ただ、この時期のヘミングウェイの力の衰えを指摘する声もあり、そう言われるとややパンチに欠ける気がしなくもない。悪くはないのだけれど、心揺さぶられるまではいかない。感動にまでは届かない。まあ、そういう感じの短編かと。(この感想じゃ、誰も読む気にならないよね。Amazonで買おうって気になるはずがない。アフィリエイト的には嘘でも褒めないとね。でも、それはできないなぁ)

グダ〜と書いてきたが、やはり作中作なので、長編の中の一つのパーツとして読まないとフェアじゃないかもしれない。

とりあえず結論づけたところで、今日はここまで。

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