『ダイス・ゲーム』 ポール・セロー

久しぶりにポール・セローを取り上げる。セローの小説は面白いのだが、読者の心を凍えさせるような鋭利な闇があり、これまで距離を置いてきた。この『ダイス・ゲーム』も正直かなり辛かった。いろいろな解釈があるだろうが、私には救いのない話だった。大袈裟かもしれないが、精神的な死を想像して逃げ出したくなったほどだ。

すっかり気が滅入ってしまい、あらすじを書く気が起こらない。ハワイのホテルが舞台の物語だというのに、こんな気分にさせられるとは。。。

途中、ギャンブルを否定するくだりがあるのだがとにかく辛辣だ。

賭事というのはどうしてこうももの哀しいのだろうと私は思った。そのルールや儀式や、それが私たちを希望に向けて愚かに駆り立てる様や、見え透いたところや、勝負がおこなわれているあいだだけはほかのいろんなことを忘れていられるというそのあわれな目的や、そういう何もかもがもの哀しい。賭事をしている人はみんな、私の目には救いのない敗者に見えた。賭事というのは一人になることに耐えられない人々のための、本を読んだりすることのない人々のための娯楽なのだ。

正論かもしれないが言葉に温度がない。偉そうになんや、わかっとるわ!と思わず言い返したくなる。私もこういう冷たい書き方をしないように気をつけようと思う。

世界中どこへ行っても嫌なことばかり。ポール・セローはそういうマインドの作家なのかな。ということで封印決定。

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