「誕生日の子どもたち」 トルーマン・カポーティ

心が震えるほどに素晴らしい。大人が書いた子どもの話ではなく、完全に子どもの心で書かれている。好みは人それぞれだが、私にとってはパーフェクトな短編だ。

カポーティは1924年、家庭を顧みない詐欺師まがいの男と17歳の南部娘の間に生まれた。両親はすぐに離婚し、母親は裕福なビジネスマンと再婚してニューヨークへ移り住む。カポーティはアラバマ州の遠縁の親戚に預けられ、その後も精神障害を持った高齢者宅などを転々としながら少年時代を過ごした。引越しを繰り返し、学校へはほとんど通っていない。後に母親は自殺している。

カポーティは親の愛情を受けず、普通の家庭で育った人には想像し難いほど孤独な幼少時代を送っている。そうしたアラバマ時代の思い出をベースにしているのが「誕生日の子どもたち」(49年の作品で原題はChildren on Their Birthdays)という短編だ。

こう書くと辛く重い話にしか思えないだろうが、多くの人に心から読んでほしい。宝石のような、という使い古された表現を思わず用いたくなるイノセントにあふれた一篇だ。

ストーリーはあえて書かないが、よく整った過不足のない表現スタイルと狂気に似た情動のようなものが同居しており、独特の魅力を放っている。この物語に登場する少年少女たちは、生きている。カポーティが創作したキャラクターかもしれないが、間違いなく私の中では命をもって生きている。南部が舞台であることは関係がない。70年前に書かれた古い時代の作品であることも関係ない。確かに生きているのだ。

今回、他の方のレビューに目を通してみたが、最上級の賞賛の声に溢れていた。読みやすく、気品があり、完成度が高く、これだけ魅力的だと、多くの人の心を掴むのも当然のことだと思う。

カーヴァーやサリンジャーもそうだが、カポーティはやはり根っからの短編小説作家なのだと思う。純粋で、残酷で、愛おしい最上級の短編たち。しばらく、私の中のカポーティブームは終わらない気がする。

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