チェス依存の話

Google検索で、「chess addiction」というワードの検索数が増えているそうだ。直訳すれば「チェス依存」。「Chess.com」「Lichess」「FIDE Online Arena」などオンラインチェスの普及、レーティングへの執着、ストリーマーによる配信の影響等々によって、プレイ時間をコントロールできない中毒患者が増えているのだろう。

スマホで手軽に対局できるゲームの場合、どうしても依存のリスクは高くなる。クリックひとつでいつでもどこでも対戦できるのだから、欲求を抑えるのはなかなか難しい。勝っている時はまだいいが、負けた時は衝動的に次の対戦を始めてしまう。下がったレートを取り戻そうと焦るため、どうしてもプレイは雑になり、ミスを連発する。負ける、負ける、面白いくらい負ける。お粗末な内容にフラストレーションは溜まっていくばかり。負のループから抜け出せず、気づけば画面の前で数時間が過ぎている。

まあ、これが依存への典型的なパターンかと思う。私も数年前、熱くなって連続30局指し続けたことがあった。気づくと8時間を超えていた。徒労感と虚無感に襲われたが、その中で「依存ってショボい」と気づけたことが大きかった。チェスの魅力は熟考の中にある。「そう来たかぁ、困ったな。でも逆転の妙手がきっとあるはず、意表を突いてルークを切ったら相手はどうするだろう、逆にキングサイドから攻めてみる?」などとあれこれ自問自答しながら最善手を捻り出すことが醍醐味なのだ。やみくもに対局すると勝っても負けても楽しくない。脳トレにもならないし、何の教訓も得られない。

今は対局を一日3局までとし、負けた後は必ず冷却時間を置くことにしている。興味深いのは、一日に30分程度しかチェスをしなくなってからレートが上がったことだ。数ヶ月対局しないこともあるが、それでも再開後は少し棋力が上がっている。とは言っても、現在の私のレートはchess.comで1650程度。1800を超えるような中上級者になればトレーニングや研究にそれなりの時間を割くのだろうが、「なんも勉強せずに1700」が私の目標なので、今の距離感のままで良いかなと思っている。本気度の低い奴の戯言と聞こえたかもしれないが、家族と暮らし、仕事を持ち、読書が好きで、週3ペースでジムに通っているので、一日3局くらいが丁度良い。

「依存はショボい」、この言葉が誰かの役に立ったらちょっと嬉しい。

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