チェスには序盤の定跡がいくつもある。それらにはルイ・ロペスとかシシリアン・ディフェンスとかスコッチ・ゲームとか、ドラマのタイトルにもなったクイーンズ・ギャンビットとか、洒落た名前が与えられている。ロンドン・システム、フレンチ・ディフェンス、スカンジナビアン・ディフェンスなど、国際的な薫り漂うネーミングも多い。
ルールを覚えた後、多くのビギナープレーヤーが「どのオープニングを指せばいいの?」と迷うことになる。(まあ、まったく迷わない人もいるだろうけど)
ビギナーだけでなく、中級者であっても、自身のスタイルを固めていく上でオープニングの定跡選びは悩ましい問題であったりする。
もちろん、定跡を知らなくても対局はできる。
「形式に縛られたくない」という人もいるだろうし、「決められた手順をトレースするのは退屈」と考える人もいるだろう。
一つ言えるのは、序盤には膨大な研究の蓄積があり、それらを予備知識として頭に入れておくとかなり効率的に戦える。定跡を何も知らなければ、初手から頭脳をフル回転させなければならず、中終盤を迎えたときには残り時間もエネルギーも足りなくなってしまうだろう。
19世紀のオーストリアのチェスプレーヤーの有名な言葉がある。
Play the opening like a book, the middle game like a magician, and the endgame like a machine.
「序盤は本のように、中盤は奇術師のように、終盤は機械のように指しなさい」
つまり、序盤定跡は確立されているので、それに従った方が良い結果が得られるということだ。
では、数あるオープニングの定跡からどれを選択すれば良いのか?
コレだ!と断言したいところだが、そう簡単な話ではない。洋服と同じで、着る人によって似合う似合わないがあり、好みも分かれる。
とにかく攻め好きな人もいれば、せっかちで待つのが苦手な人もいる。忍耐強くて手堅い人もいる。王道を行きたい人がいれば、他人と同じじゃ嫌という人もいる。つまり、性格や指向によって選ぶべき定跡は変わってくる。
女性が結婚相手を選ぶ場合とちょっと似ているかな。
「超退屈だけど親が金持ち」
「馬鹿だけどイケメン」
「クズだけど優しい」
「貧乏だけど才能がある」
「醜男だけどなんか落ち着く」
あなたなら、どの人を選びますか?
このくだりは要らなかったかな。とにかく勝敗にこだわるのであれば、あえてマイナーな定跡を選ぶという選択肢もある。見慣れない手を指すことで相手を惑わすことができる。ただし、マイナーな定跡にはマイナーな理由がある。弱点が多かったり、勉強しようにも情報が少なかったり。それと、ある程度レートが上がってくると、奇を衒って勝てるほど甘くはない。
メジャーな定跡を選んでおけば教材は見つけやすい。YouTube上でも解説動画がいくらでも見つかる。マイナス面としては、他の人も勉強しているので、ちょっとやそっとじゃ優位に立つことができない。
たくさんの定跡を勉強して、その時々で指し分けたら?と考える方もいるかと思う。それには相当の時間をチェスに割く覚悟が要る。受験生のように必死でオープニングの勉強に勤しむことができるだろうか。報酬も罰則もない中で、根気強く学び続けることは難しい。
ここまで書いてきて改めて思う、定跡選びは実に悩ましい。
相対的ではなく、絶対的な理由があれば迷いなどすぐ消え去るだろう。
例えば、カスパロフから突然電話がかかってきて、「イタリアン・ゲームを指すべきだよ、アグレッシブな君によく似合うから」と言われるとか。バーで飲んでいたらタリが隣に座って「相手が初手d4ならキングス・インディアン・ディフェンスを指しなさい。引き分けなど狙わず、大いに闘いを楽しむといい」と語り掛けてくれたら、迷いなど吹っ飛ぶだろう。私の場合、グリシュクが・・・
何を書いているのかわからなくなってきた。グダグダしてきたので、今日はここらでやめておこうと思う。オープニングについては改めて書きます。
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