「ケ・ティ・ ディーチェ・ラ・パートリア?」 アーネスト・ヘミングウェイ

「ケ・ティ・ ディーチェ・ラ・パートリア?」 アーネスト・ヘミングウェイ

「ケ・ティ・ ディーチェ・ラ・パートリア(祖国は汝に何を訴えるか)?」という長い邦題が与えられているが、なんとなく面倒くさそうと敬遠している人もいるかと思う。

「ケ・ティ・ ディーチェ・ラ・パートリア?」(Che Ti Dice la Patria?)はイタリア語で、Google翻訳によると「祖国はあなたに何を伝えますか?」という意味。個人的には、わかりにくいのであまり好きなタイトルではない。

この短編は、イタリアのラ・スペツィアへとクルマで向かうところから始まる。スペツィアは世界遺産のチンクエ・テッレでよく知られる地域で、深みのあるグリーンの海もまた美しい。

まずはラ・スペツィアへ。

ラ・スペツィアの世界遺産チンクエ・テッレ。

スペツィアを発って、ジェノヴァを通過する。

それからセストリでランチを食べる。

こうして物語に沿って風光明媚な風景写真を並べると、素敵なイタリア旅行記を思い浮かべるかもしれないが、まったくそういった話ではない。

むしろその逆で、図々しいヒッチハイクの若者、しつこく誘ってくる売春婦、激しく降る雨、跳ね上がる泥水をかぶるクルマ、理不尽な理由で払わされる罰金、といった具合に行く先々で不快な人々、不愉快な出来事が待っている。

少しも楽しくない残念すぎる10日間。ヘミングウェイはどうしてこのようなテンションの下がるイタリア旅行を小説の題材にしたのだろうか?

実は、この短編にはイタリアの独裁者ムッソリーニ率いるファシスト党への非難が込められている。ヘミングウェイのような個人主義者にとって、絶対服従の全体主義は受け入れ難いものだったに違いない。スペイン内戦でも反ファシズムにどっぷりコミットしたように、どうしても排外的な独裁政権を許せなかったのだろう。

直接的な表現で反ファシズムを叫ぶのではなく、旅の道中に肌で感じたイタリアの陰気さ、不健康さを淡々と描いている。明るく清潔で楽しいフランスと対比させることで、そのコントラストを強調している。政治が間違っているとこういうことになるのさ、そう客観的な外国人の目線で浮き彫りにしているのだ。