長大な宇宙の旅の末にたどり着いた惑星。そこには数百の都市があるにもかかわらず、生命体がまったく存在しない。街も空港も高速道路も静まり返っている。この惑星に暮らしていた生命体は高い科学技術を有するが、最低レベルの野蛮さを特徴とし、最も人気のあるスポーツは戦争だった。大量破壊兵器を使用し、何年にも渡って殺戮を繰り返した。苦痛と暴力は、いつでも自然なこととして身近に存在していた。高度に進化したコンピュータは、これら野蛮な生命体を「差し迫った脅威」と捉え、何らかの手段を使って葬り去った。そして、この惑星の生命体は消滅した。
というストーリーだ。
『ある惑星からの報告』は、英国の大SF作家であるJ・G・バラードの短編全集5に収録されている。人間たちの、学習することを知らない愚かさへの皮肉たっぷりの短編だ。ベタといえばかなりベタな発想である。
私はバラードの作品をほとんど読んだことがない。そもそもがSF小説に興味がない。SF映画も積極的に観ることはない。想像の部分があまりに多過ぎるため、「壮大な作り話でしょ」と冷めてしまうためだ。そうした頭の硬さで損をしているのかもしれないが、ユニークな着想や斬新な設定を楽しむ気持ちにはなかなかなれない。
本作に関しては少し楽しめたが、語り手である地球外生物や人類を葬り去ったコンピューターが、人間的な感性で描かれている気がしてやや違和感を覚えた。「ど素人がわかったようなことを言うな」とバラードファンに怒られそうだが、クローネンバーグの映画みたいなディープさを期待していたので、ちょっと作品選びを間違えた気もしている。
でも、予想していたより難解ではなく、むしろわかりやすかった。
人間は、懲りずに延々と殺し合いを続ける野蛮な生き物。文明が高度に発展しても暴力から離れられない。そして、破滅へ。昨今のニュースがそれを証明している。アメリカが動くのではなく、国連が動くのではなく、人間に愛想を尽かしたAIが何かしら先に動き出したりするかもね。