「ヘミングウェイ おすすめ短編(入門編)」の記事をアップしてからかなり時間が経っているが、今回は中上級編と題して8篇をチョイスしてみた。
初級とか中上級とか言っても特に定義はないのだが、初級編では魅力がわかりやすい作品を主に選んだ。(初めてヘミングウェイを読む方、どこが良いのかよくわからないという方は初級編をぜひ)
いずれにしても、完全に独断と偏見によるチョイスで、個人的な好みが色濃く反映されている。今の気分によるところもあるとは思う。(でも、好きな作品はだいたい安定している)
この記事が、皆さんが本を手に取るきっかけになればちょっと嬉しい。
「世界の首都」
マドリードのペンションで働く、闘牛士に憧れる少年の話。端正で、清澄で、雑味のない文章がとても心地好い。群像劇としての魅力にも溢れている。
「僕の父」
ヘミングウェイの数ある短編の中で1、2を争う名作。盛りを過ぎた騎手である父と共に生きる日常。短編小説の一つの到達点であり、読後10年経っても鮮やかさはそのまま心にとどまる。
「橋のたもとの老人」
著者のスペイン内戦ものの一つで、身寄りの無い老人の哀れな姿を通して戦争の虚しさを描き出している。文庫にして4ページと短いが、長編「誰がために鐘は鳴る」並みの名作と評価する声もある。
「医師とその妻」
行間を読ませる技巧が冴え渡っていて、著者が両親へ抱く複雑な心情が伝わってくる。一流の短編作家が手がけた、極上の一遍。
「誰も死にはしない」
スリリングで感傷的なハードボイルドタッチの異色作。ヘミングウェイ作品では珍しく、ドラマチックでハイテンション。スペイン内戦取材の興奮から生まれた。
「二つの心臓の大きな川」
この短編を読むことは、健やかな精神を取り戻すための儀式である。透き通り、若々しく新鮮。けがれが取りのぞかれていくカタルシスに充ちている。
「ある訣別」
月光に照らされた湖面をボートで去っていく女の子。毛布に顔を埋めて悶え苦しむ男の子。若い二人の別れの夜を描いた短編で、とてもとても切ない。
「三日吹く風」
「ある訣別」の続編に当たり、別れの後に友人と酒を飲み交わす様子が描かれている。後悔と絶望に胸が締めつけられる。リアリティのある終わり方も秀逸。