「ネヴァダ」 ジョン・アップダイク

アップダイクは、とても繊細で知的な作家だと思う。時々、ドキッとするほどセンシティブに心の動きを描写する。

「ネヴァダ」は、妻と離婚することが決まっている男の話だ。妻は新しい恋人とすぐにでも結婚したがっている。ハネムーンでホノルルへ行くので、娘二人をネヴァダ州で拾って、コロラド州のデンヴァーまで連れて行ってほしいと、男は頼まれる。レンタカーを借り、離れ離れに暮らすことになる実娘たちを乗せて走る。食堂に寄り、スロットマシーンで遊び、そしてホテルへと入る。娘たちを寝かせた後、男がとった行動は…

哀れな夫であり、どこか情けない父親である中年男を描いたこの「ネヴァダ」(原題:Nevada)は、おそらく70年代に描かれた短編だと思う。日本では75年のPLAYBOY誌が初出のようだ。著者であるアップダイクは76年に離婚しているので、時期的には完全に著者の私生活と重なり、そのせいかやたらとリアリティがある。

責任を果たせなかった親の弱さ。人生に疲れ、でもどこかセンチメンタル。罪悪感を抱いているものの、軽々と欲望に流れてしまう。矛盾を抱えているというか、芯がないというか、とても現実的で弱い人間が描かれている。

私も芯の通った人間とは言えないので、読みながら感じるものは多かった。でも、この短編は読者に元気をくれない。湧き上がってくる力を感じない。異論もあるだろうが、これが率直な感想だ。世知辛い世の中、知的な人に元気を求めることが無理な話なのかもしれないが、線の細さが個人的には気になった。他の作品も読んでみたが、だいたい同じ印象。ファンの人には悪いが、嘘で褒めても仕方ないので本音を書かせてもらった。アフィリエイトを考えたら、取り上げる作品を大絶賛してアマゾンで買ってもらった方が良いのだが、そんな詐欺まがいのことは私にはできない。(甘いこと言っているから金持ちになれないのかなぁ・・・) 

良いオチが見つからないのでもう寝ます。おやすみなさい。


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