「こころ朗らなれ、誰もみな」 アーネスト・ヘミングウェイ

今回、柴田元幸訳のヘミングウェイをはじめて読んでみた。「こころ朗らなれ、誰もみな」という短編は、高見浩訳では「神よ、男たちを楽しく憩わしめたまえ」という題名で「ヘミングウェイ全短編2」に収録されている。
原題のGod Rest You Merry, Gentlemenは、イングランドの古いクリスマスキャロルのようで、日本では「世の人忘るな」としてカトリック教会で聖歌として歌われているらしい。(ちなみにカトリックでは聖歌、プロテスタントでは賛美歌と呼ぶ)

神が歓びをくださりますように、紳士方。
うろたえないで。(失望しないで)
救いの主、イエス・キリストが
このクリスマスの日に生まれたことを思い出して。

といった内容で、歌のタイトルをそのまま物語のタイトルにしている。

高尚な話かと思いきや、どちらかというと低俗な話だ。

カンザスシティの高い丘の上にある市営病院の待合室での、ふたりの救急外科医と僕の会話のスケッチで、ブラックユーモアに溢れている。シニカルでちょっと笑えるけど、素敵な短編とは言い難い。これといったプロットを持たない、会話の切り取りはヘミングウェイの短編には多い。御手の物といった感じで、パパッと書いたようにも思える。でも、そういう作品が案外いきいきして面白かったりもする。逆に「殺し屋」のようなプロットに凝った作品は、どことなく生気がなくて魅力に欠ける。(個人的な意見ね)

翻訳の違いについては、割と大きいと感じた。柴田ヴァージョンは人間味があって柔らかい印象。読みやすいような読みにくいような、ユーモラスだがちょっと癖がある。高見ヴァージョンは端的で癖はないが、どこか冷たい印象を受ける。好みは人それぞれだろうが、原文に近いのは高見ヴァージョンではないかと思う。(多分)

この短編は、おそらくヘミングウェイが30歳頃に書かれたと思われれる。きちんと調べろよって言われそうだが、なんだか気力が湧いてこない。ていうか、この作品、ネット上にもほとんど情報がない。 深掘りすることもできるのだろうが、そこまでの作品でもないかなと。(なんか偉そうでスミマセン)

締まりのない記事になったが、大目に見てほしい。(サムネールの画像もなんだかイマイチ…)

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