独断と偏見の作家紹介 村上春樹編

ヘミングウェイ、オコナーに続いて3人目に取り上げる作家は村上春樹。私はハルキストではないし、アンチでもないので、フラットに思ったことを書こうと思う。タイトル通り独断と偏見なので、いつものことだが客観性は求めないでいただきたい。

私の抱いている村上春樹像は、他人の言動や時代のムードに基本的に流されない人で、守りが固いというイメージ。無頼でも肉食でもなく、いつもどこか冷静で思慮分別があり、世間と一定の距離を保ちながらマイペースで走っている長距離ランナー。つまり「大人」だと思う。この頃は、欲に負けてばかりの理性を欠いた中高年が多いので、「大人」であることはとても魅力的に私には映る。

小説のテイストはマイルド。ふわりとした空想をキャッチしてさっと料理したかのようなしなやかさと絶妙さがある。子どもの頃にひとりで楽しんだ空想遊びを今も手放さずにいる、そんな印象。でも、口当たりは良いがアルコール度数が高いカクテルのようにぐらりとさせられる時があったりもする。

私にとっては読書の愉しさを思い出させてくれる数少ない作家の一人であるが、物語よりも文体の滑らかさと濃度に惹かれる部分が大きい。リニアな文章は、液体的で心地好い。内容はよくわからないことも多いが、なんとなく心地好いので気にならない。

無骨さや野性味は薄いので、ラギッドな世界を好む輩には受けが悪いだろう。でも、他の多くの作家より「ロックしている」と私は感じる。

守りが固い人と書いたが、ラジオなどでのおしゃべりでは気さくなおじさん(意外に冗談が多い)で、70歳になってもキャラがまだよく掴めないところがある。(露出が少ないから仕方ないか)

ノーベル賞は獲れるのだろうか。それに関しては、関係者の中に積極的に反対している人がいるような気もするが、敵を作るような主張はあまりしないし、意外と左翼扱いもされていない。そのあたりの微妙な立ち位置もある意味で安定感があり、まあ近々受賞するのではないだろうか。なんとなくそう思う。。。

という感じかな。

誹謗中傷にも感情的に反応しないし、だれとも群れないし、大事なものを大事にし続けているところなど、先輩として学ぶところは大きいと私は思っている。

好きな短編を挙げるなら、「沈黙」には少し思い入れがある。「ハンティング・ナイフ」や「ハナレイ・ベイ」など海を舞台にした作品がとくに好きだ。

今回はここまで。

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