今回は一つの短編を取り上げるのではなく、若き奇才と呼ばれるセス・フリードのデビュー短編集「大いなる不満」 を読んでの感想を書こうと思う。
読み始めてすぐ思ったのは、「ちょっと読みにくいかも」ということ。
読み終えてまず思ったのは、「やっぱり読みにくかった」ということ。
1、2、3、4、5、6、7・・・という流れで書かれていれば内容はスーと頭に入ってくるが、セス・フリードは3、4、6、8・・・という感じであえて省いてくるため、抜けた部分を読者が想像して補わなければならない。詩を読むときの感覚に少し似ているかもしれない。
加えてアレゴリーの形式を採っており、作中に登場する人物や動物には何らかの抽象的な概念を与えられ、物語全体が不条理な世の中や破滅に向かう世界の暗示となっている。
私のリテラシーが低いのは認めるが、きめ細かな描写も相まってやや疲れる読書となった。
著者は自身のことを本質的に短編作家と見ているようだが、確かにこの文体での長編はイメージしにくい。
セス・フリードは1983年生まれの若いアメリカの作家で、奇抜な設定の物語が多く、リアリズムの枠など気にしていないかのような軽快さがある。破綻しない程度にユーモアや野性味も散りばめられている。デビュー作であるのに、すでに器用なテクニシャンという感じで、どの作品も緻密に書かれている。
読みにくいと書いたが、スマートでロジカルで将来性溢れる作家なのだと思う。私の好みにフィットしないだけで、知的な人には高く評価される作家という気がする。