名作映画のようなタイトルからロマンチックな物語を想像していたが、まったく違っていた。
両親は3年前に離婚し、それ以来、父とは一度も顔を合わせていない。移動の途中、ニューヨークのグランドセントラル駅で一時間半の乗り継ぎ時間があり、父を昼食に誘った。12時に再会し、レストランへ入ったが…
という話だ。これだけの説明だと深みのある文学的な物語に思えるだろう。ところが、この父親がかなり癖の強い男で、レストランに入った途端に店の人と揉めてしまう。酒を注文するために一言二言を発しただけで、相手を怒らせ、その店に居られなくなってしまう。四軒目の店でウェイターに「地獄に堕ちろ!」と捨て台詞を吐き、タイムオーバー。電車の時刻を迎えてしまう。父親は「悪かったな、坊主」と言い、息子をぎゅっと抱きしめる。
どこか憎めない豪胆な男と言えなくもないが、言葉に毒があり、態度がやたらとデカイ。一緒にいて恥ずかしい気持ちにさせられる、そういう空気の読めない破壊的な男なのだ。
この短編はあっという間に読めてしまうほど短いが、インパクトはかなり強い。ヘミングウェイに通じる骨太な魅力もあり、長く心に残りそうだ。