東オレゴンへ叔父さんと一緒にクルマで鹿狩りへ行く、その道中を軽妙なタッチでスケッチした感じの短編。かなり有名な作品なので、既読の方も多いかと思う。
オレゴンはこういうところ。
地図でいうと、北米の左の方でシアトルのすぐ下あたり。物語の舞台は東オレゴンなので海側でなくて山側。ちょっと馬鹿っぽい説明だけどわかりやすいでしょ。最大の都市はポートランドでトレイルブレイザーズの本拠地だ。NBAが観たくなってきた。ここでバスケの話に逸れてしまうのが私の悪い癖だが、グッと堪えないとね。(成長していることを褒めてほしい)
この短編の主題はわかりやすい。若い頃は地元で知られたスポーツ選手で伝説的な遊び人とも言われた叔父さん、かつてはやたらと広告を目にしたコペンハーゲンの噛みタバコ、スターの座も富も何もかも手に入れたのに自ら命を絶ったマリリン・モンローなど、「古き良きアメリカの死」がテーマとして通底している。小さなエピソードを重ねながら、ゆるやかに、やわらかく物語が紡がれている。
デリケートで透明感があるがちょっと感傷的過ぎるかな、というのが率直な私の感想。何年も前に読んだ時は、もう少し開放的で明るい印象を抱いた気がするが、今読み返すと寂しくてどこか危うさすら感じる。
もう戻ってはこない過去を想う。そういう気分に抗えない時もあるが、心はセピア色の悲哀に支配されてしまう。
私は感傷に浸るメンタルの強さを持ち合わせていないので、すぐに振り払おうと動き出してしまう。先にある何かに向かっていれば、過去に支配されずにいられる。ブローティガンの綺麗な文章は好きだけど、今は乾いた感傷は欲しくないかな。