半年ほど前、ご夫婦で経営するカフェ(奥様はフランス人)へ行き、そこで児童書の「プチ・ニコラ」をはじめて知った。1、2ページ読んだだけだが惹かれるものがあり、ずっと頭の片隅にあった。
「プチ・ニコラ」はシリーズもので何巻もあり、それぞれにいくつもの掌編が収められている。
・教師にパンを踏まれ、キレて暴言を吐き、退学にさせられる太った男の子の話。
・時計をプレゼントされたことで家族の生活が狂いはじめるが、友だちに時計を壊されたことで平和が戻ってくる話。
・休み時間に決闘がはじまろうとしていたが、誰が審判をするかで殴り合いがはじまる話。
などなど、個性的であることに肯定的な話ばかりで、あけすけで奔放な空気が心地好い。けっして道徳的ではない。やんちゃだけど実はモラルを描いている、といったあざとさもない。
優等生のアニャンのことが大嫌いだけどメガネをかけているから顔面をなぐれないとか、アルセストはしょっちゅう何か食べているから手がベタベタして気持ち悪いとか、パパがタバコの灰を絨毯に落とした時のママみたいに先生がイライラしているとか、フランスらしい辛辣で毒の強い表現にあふれている。
世の中には偽善的な児童文学が多いが、そういうものにはヘドが出る。その点、プチ・ニコラは常識的に見れば教育上よろしいことはほとんど書かれていない。ピュアで残酷で愉快な子どもという動物が、生き生きとそこには描かれている。つまり、偽善児童文学にはない健やかなリアリティがあるのだ。
*私が今回読んだのは「プチ・ニコラ2」
ちなみに、ローラン・ティラール監督によって映画化されている