「共犯者」 松本清張

10年以上前のことだが、松本清張作品を手当たり次第に読んでいた時期があった。その勢いで杉並の邸宅を見学しに行ったほどだ。(ただ周辺を散歩しただけだが。。。)

「共犯者」 は再読だがやはり面白い。すぐに引き込まれ、苦もなくあっという間に読み終えた。陳腐な表現だが、面白いしか言葉が浮かばない。この作品に限らず、著者の短編で我慢の読書を強いられたことはほとんどない。

余談だが、みうらじゅん氏は清張の大ファンらしく、「清張地獄八景」というファンブックまで出している。

で、「共犯者」だが

偶然知り合った男と組み、銀行を襲う。犯行後、奪った金を山分けし、金輪際会わないという約束を交わして二人は別れた。大金を元手に事業を成功させたものの、共犯者にたかられる不安に襲われ、居ても立ってもいられなくなる。今どこでどのような暮らしをしているのかを調べ、共犯者の監視をはじめるが…

といった、欲に目が眩み、最後は破滅するという著者好みのストーリーだ。誰もが持っている狡猾さや心の弱さを熟知した作家が、巧みに同化を誘ってくる。さすがは戦後を代表するベストセラー作家という感じで、読者はいとも簡単に引きずり込まれてしまう。

文体は硬質で凝縮されている。

「なるほど金と信用と地位は得た。が、それをゆるがすものは、商売の不況ではない。内堀彦介の既往の秘密を握っている共犯者の脅迫だった。財産はできたが、その死命はその男が握っているのだ。ひとたび、脅迫をうければ、せっかくの財産が枯れるまで、その恐喝はつづくに違いない。あの陰性な顔つきをした町田武治という男は、そんなことを充分にしそうな人物に思えた。」

余計なことを考えず、ただ清張節を堪能するのが正しい読み方だ。(なぜかわからないが、偉そーに断言してみたくなった)

ちなみに清張は、映画化された自身の作品では野村芳太郎監督の「張り込み」や「砂の器」を気に入っていたらしい。今観ても画のセンスの良さを感じる。丹波哲郎も最高だ。

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