【ネタバレ注意!!】
なかなかインパクトの強い短編だ。
老いた男性同士の性行為、しかも違法薬物でキメキメでというエグさ。ちょいちょい村上龍のトパーズを思い出したが、そこから妖艶さを取り除いた感じで、まあ映画化は難しい短編だと思う。(高齢者男性の絡みは映像で観たくはないでしょ)
ストーリー展開もシュール。
男友だちに「妹を紹介してやるよ」と言われて期待を膨らましていたら、その話がすべて嘘で、実際には妹は存在しておらず、男友だち自身が行為を迫ってくるという話。あまりに予想外の結末に言葉を失ってしまった。ここまで常軌を逸したストーリーでもどこかポップで「ミランダ・ジュライらしい」と思わせてしまうのだから、唯一無二な作家だと思う。他の短編同様、常識に囚われず自由に筆を走らせていて、たやすく境界線を飛び越えていく軽やかさに才気を感じた。
と絶賛してみたが、ミランダ・ジュライを画像検索していてあることに気づいた。
素の表情が一つもない。どの写真を見ても、表情、仕草、服装、背景まできめ細かに演出されている。
ミランダ・ジュライは不器用な女の子のリアルを描いて多くの女性の心を掴んでいるが、彼女自身は自己プロデュース能力の極めて高い器用なクリエイターと見ることもできる。思うままにしか生きられない、そうしたアンバランスな奔放さも計算されたブランディングなのかもしれない。けっして批判しているわけではなく、もっと危ういパンキッシュなイメージを持っていたので、私の中で少しキャラ修正が必要かなと思っている。過激な反体制の人というより、スタイリッシュな芸術家という感じかと。外見的には似ても似つかないがトム・ウェイツに共通するものを感じる。
まとまりのない記事になってしまったが、扱う題材が何であれ解像度の高い瑞々しい短編に仕上げてくるのは流石と感じた。言うまでもないことだが、才能やセンスだけに頼らず、もの凄く裏で努力している女性なのだと思う。
夜も更けてきたのでトム・ウェイツを子守唄に眠ることとします。