「幻影の書」 ポール・オースター

「幻影の書」 ポール・オースター

ポール・オースターは、とても豊かな作家だと思う。立体的に映像を喚起する力があり、迸る奔放な感性と深き闇が同居している。文学の底力や可能性をものすごく感じるし、どの作品も長く長く心に残る。

このブログでは、ポール・オースター作品を取り上げたことは一度もない。短編小説の作家でないこともあるが、どう捉えたらよいのか悩ましかったためだ。今回、本国で最高傑作の呼び声高い「幻影の書」 を読んでみたが、やはり記事にするのは難しいと感じた。理屈ではない魅力があって明文化しにくいのだ。

物語の展開はかなり奇抜で、具がたくさん詰まっている。とてもじゃないが、ストーリーを説明しようという気にはならない。あらすじを紹介したところで、虚しくなるだけだろう。

面白いのかと訊かれれば面白いと即答できる。かなり面白い。不測の事態に次々と襲われ、劇的で興奮させられる。ジム・トンプソンやジェームズ・ケインの犯罪小説を読んでいると錯覚するほどスリリングなシーンも多く、そうした通俗性もロックしていて魅力的だ。

著者の個性でもある作中作品の描写はやや長いかなと感じたが、作品にリアルな重量を与えるためには必要な気もするし、本作への著者の力の入れようはビンビンと伝わってきた。まさに力作という印象。

「絶望の淵を独り彷徨っていたら、予測不能な運命の波にさらわれ…」などとまとめてしまうと、なんだか単純な「再生」の物語に思えてしまうが、清濁併せ呑む度量の大きさがあり、濃厚な生のたくましさがある。

抽象的な感想ばかり書いているな。。。

とにかく、オースターらしい小説の醍醐味を「幻影の書」 で味わうことができる。(乱暴な書き方だね)

伝わりにくいかもしれないが、良質なロックミュージックに近い感じかな。「ロックを聴くように読む」、どこかそういう感覚がある。コーエン兄弟の映画を観るときの、「ロックを聴くように観る」感覚と少し似ているかもしれない。なんだか話が脱線して迷子になりそうなので、この辺でやめておこうと思う。

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