片腕のない男が耳の不自由な娘と結婚するものの、新婚旅行中に娘を置き去りにして・・・
あらすじを書いて、感想を述べても、何も意味がない気がしてきた。この感覚を説明するのは不可能だと思う。とにかくフラナリー・オコナーは強い。途轍もなく強い作家だ。読んで体感するしか、この凄さを知る術はないと思う。
何故、これほどにグロテスクで露骨な作品に惹かれ、力を感じるのだろう?
その答えを、巻末の解説の中に見つけた。
「なまぬるい人情で折り合いをつけようとする手法などよりもずっと深い愛に満ちている。感傷とは無縁の書き手であり、自身に厳しい。(中略) 意見や思想を小説のなかの言葉で語ろうとするのではなくて、あくまでも細部の積み重ねから成る具象的な場面を読者の前に示す。」
うん、本当にそう思う。
全身全霊で執筆し、難病を患って39歳の若さで世を去った最強の女流作家。フラナリー・オコナーに敵う強靭さをもった作家はいるのだろうか?
コーマック・マッカーシー?うーん、ドストエフスキーあたりを持ってこないと張り合えないかもしれない。
オコナーを未読の方は、騙されたと思って是非読んでいただきたい。まったく受け付けない人もいるだろうが、もしかしたら人生が変わるくらいの出会いになるかもしれない。但し、娯楽性を求めている人には向かないのでご注意を。スタイリッシュな小説を求めている人にもまったく向かない。笑いとか、感動とか、ユーモアとか、そういう次元の要求には応えてくれない。なんというか、とにかくヤバい。あまり大袈裟なことは言いたくないが、オコナーは特別で、そのヤバさは不思議なことに幸せをくれるのだ。