多分、1957年の短編。
老巡査が雪山で逃げた脱走兵を追ったら自分の息子だった、という哀しいオチのついた短編だ。(ネタバレ!)
残酷なバッドエンディング。どこか幻想的ではあるが、抽象的ではないので、読みにくくはなかった。
種々のものが雑多に入り乱れているのが私たちが生きる現実だけど、安部公房の世界は簡素で雑味がなく、色彩はわずかで、閉じられていて仄暗い。
哲学的で魅惑に充ちているものの、ねっとりしていて気味が悪い。(いい意味でね)
そういえば、安部公房ってジョージ・シーガルが好きだったかと。
あらためてスタイリッシュな作家だと思う。最近、三島由紀夫をよく読んでいて、タイプはまるで違うけれど、この世代は独自のスタイルを持っている作家が多いなと思う。マニアの気持ちはとてもよくわかる。海外で評価されるのもわかる。洗練されていてお洒落だからね。安部公房を読んでいると、作家ってカッコイイなって思えてくる。(浅い感想で申し訳ない)