「岬にての物語」 三島由紀夫

三島由紀夫に関してはほとんど知識がない。東大で講演する映像をYouTubeで何度か観たことがある。歯に衣着せぬ物言いで、でも愛嬌のあって憎めない、独特の文語的な言い回しとユーモラスな受け答えのできる人気者というイメージを持っている。スター性というか、カリスマ性というかわからないが、タレントとしての資質が高い人で、何を話しても聴衆を釘付けにする魅力を備えている人。

短編集「岬にての物語」は、20~40代に書かれ、既刊の短編集から漏れた作品を収録したもののようだが、作品のレベルは高い。

表題作である「岬にての物語」も、明晰で、典雅で、美しい名篇だと思う。

でも、個人的には、ちょっと苦手。昔読んだ時と同じアレルギー反応が出てしまった。

著者のキャラと語り口が濃すぎるのかな。こういう古典的で甘美な文体で書かれたら、なにを書いても同じ味になってしまう気がするのだが、どうだろう。私が芸術というものを理解していないのだろうか。。。

どこを切っても著者の自信が漲っていて、それが受けつけない原因かもしれない。押しの強さはコンプレックスの裏返しなのかもしれないし、努力により手に入れた高度な美なのかもしれないが、やはり何度読んでも私の感性には合わないようだ。趣味や好みの問題なので、まあ無理して読む必要もないのかなと思うが。

相性の良くない作家でも、読むことで得るものはある。自分の好みもはっきりする。年齢で味の好みが変わるように、三島を無性に読みたくなる日がいつか来ないとも限らない。

まあ、いいでしょう。(何が?)

仕事のメールが入ってきたので、今日はここまで。

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