「モントリオールの恋人」は現代のアメリカ文学を代表する作家リチャード・フォードの恋愛短編小説であり、村上春樹氏がセレクトし、自ら翻訳したラブ・ストーリー集「恋しくて」に収められている。
語り口巧みな大人の恋愛小説で、ほどよくサスペンスフル。展開もよく練られている。とにかく女性の描写が白眉で、恋愛上級者っぽさが漂っている。リチャード・フォードはレイモンド・カーヴァーと親友だったみたいだが、作風はまるで似てない。タイプの違う二人だから、逆に気が合ったのかもしれない。
正直な感想を書かせてもらうなら、こういう甘い小説は苦手だ。甘いというよりほろ苦いのかもしれないが、ほろ苦いのも好きではない。読んでいて、どこかむずがゆくなってしまう。ベテラン俳優が演じている恋愛ドラマみたいで、気恥ずかしくて観ていられなくなってしまう。
誤解しないでほしいが、恋愛小説というジャンルが好みにフィットしなかっただけで、クオリティ云々の話をしているのではない。その上でもっと単刀直入に言わせてもらうなら、「いい大人の男が、恋愛のことをペラペラ語ってんじゃねぇよ」と思ってしまった。ファンの人に喧嘩を売っているような好戦的な書き方になってしまった、、、(正直でよろしい!と笑って許してください)
でもね、どうだろう。中高年男性が恋の話を真顔でしていたら、ちょっと引くでしょ?この短編を褒めているレビューは多いけど、私の感性がおかしいのかな。まあ、個人的な好みだけで作品を斬っちゃいけないとは思うが、かなり疲れているせいもあり、今は思慮深くはなれそうもない。
私はハードボイルドが根っから好きなので、読書中にコーマック・マッカーシーが無性に読みたくなった。それと神田伯山の講釈が無性に聴きたくなった。
どうやら洒落たラブ・ストーリーは私には無理らしい。。。
上質な甘さが好きな人は、ぜひご一読を。