「嫉妬」 ウィリアム・フォークナー

「嫉妬」(原題:Jealousy)は、1925年にニュー・オリンズの新聞に掲載された短編とのこと。その時、フォークナーはまだ27歳なので、かなり初期の短編ということになる。

若い妻をもつ肥満の中年男の過剰(異常?)な嫉妬を描いた作品で、全体が憎悪に満ちていて、微かな希望の光さえも奪う救いのない暴力が描かれている。「嫉妬」というタイトルが付けられているが、これは嫉妬深さ云々の問題ではなく、この夫の言動は常軌を逸しているようにしか思えない。物事の解釈の仕方や執着の仕方が、常人の理解を超えてしまっており、普遍性が感じられない。

以前から、どうもフォークナーが苦手だ。食わず嫌いというわけではないのだが、かじってみて「やっぱり無理かな」となってしまう。「嫉妬」を読んだのは2回目ではあるが、自分が生きているのとは別の世界の話に思え、消極的な読書になってしまった。

よく知らない作家について、訳知り顏で何か語るのは良くないので、浅い感想になってしまうが今回はこのくらいで止めておこうと思う。一部の人たちにとても高く評価されている作家なので、まだその魅力に気付けていないのかもしれない。私はちょっと人間的に軟弱なところがあるので、癒されたい、元気になりたい、心踊らせたい、読書に対してそうした期待がある。フォークナーは渋すぎるというか、ドライすぎるというか、いつも少し気後れしてしまう。残念ながら、今のところ相性が良くないようだ。

フォークナー短編集 (新潮文庫)

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