「レジェンドビジョン」 心に響くヒダヤットの言葉

今回は短編小説の解題ではなく、バドミントンの話を少し。いつもより柔らかく、「です」「ます」で書きます。
この前の日曜日(2017年9月10日)に、「レジェンドビジョン」というバドミントンのイベントを観てきました。場所は、東京の町田市立総合体育館です。「レジェンドビジョン」って聞いたことがありますか?そもそも、バドミントンにまったく興味がないという方も多いかと思います。このイベントは、リン・ダン(中国)、リー・チョンウェイ(マレーシア)、ピーター・ゲード(デンマーク)、タウフィック・ヒダヤット(インドネシア)という伝説と呼ぶに相応しい4人のプレーヤーが、バドミントンを世界のメジャースポーツにするために立ち上げたプロジェクトです。
http://www.yonex.co.jp/badminton/legends/
一人の名前も知らない方も多いかとは思いますが、この4人が揃うのは大げさでなく奇跡と呼べるほどに凄いことなのです。バスケットで言えば、ジョーダンとマジックとシャックとコービーが揃うくらいに。(例えが下手ですね。野茂とイチローと松井とマーくん、というのもなんかちょっと違う) とにかく日本で初開催ということもあり、観客は3000人以上と超満員。派手な演出や豪華なゲスト(高橋・松友ペア、奥原希望、山口茜etc)もあって、かなり盛り上がりました。
レジェンドたちによるエキシビジョンマッチでは、トリッキーなプレーやコントのようなユニークな演出で会場全体が笑いと歓声に包まれていました。おどけたり、とぼけたり、とにかくウイットに富んだ見せ場の連続で、観客をまったく飽きさせることなく、予定時間を大幅にオーバーするサービス精神まで見せてくれました。心を打たれたのは、彼らが余興としてではなく、プロのエンターテイナーに徹していたことです。金メダリストや元世界ランキング1位の選手たちが、体を張って楽しませようと汗だくになっている。その姿に素直に感動を覚えました。
レジェンドの一人ヒダヤットは、エキシビジョン終了後にマイクを向けられ、開口一番こう話しました。
「僕たちがふざけていると感じた人がいたなら謝ります、ごめんなさい。ただ、バドミントンの楽しさを伝えたかっただけなのです」
この言葉を聞いた時、思わず泣きそうになりました、あまりに誠実な言葉で。マッチョな人間からはけっして出てこないコメントでしょう。彼は世界を何度も制し、バドミントンが国技のインドネシアでは国民的ヒーローです。その彼がボランティア的なイベントで惜しみなく働き、そして必死にバドミントンに打ち込む人たちを気遣ったのです。この想像力とデリカシーに溢れたコメントを記憶に残しておきかったのでブログに書きました。
Yonex Arcsaber 10 Legends署名シリーズタウフィック・ヒダヤット