香港で村上春樹作品が18歳未満発禁に

香港で村上春樹作品が18歳未満発禁に

出版物などの審査を行う香港の「淫猥物品審裁処」(字面がエグい)が、村上春樹作品を「下品図書」と認定し、18歳未満への販売を禁止したそうだ。長編「騎士団長殺し」に性的な表現があるといった理由らしいが、このニュースは香港各紙で取り上げられている。香港にはハルキストが多く、反発の声も上がっているようだ。約100万人が来場するという毎年恒例の「香港ブックフェア」も「下品図書」の販売が禁じられているため、村上作品は撤去されたそうだ。

背景に政治があるのかはわからないが、今更なぜという気はする。それだけ村上春樹がビッグネームとも言えるだろう。当の本人は好戦的な人ではないので、おそらくは何もリアクションをとらないと思う。淫猥物という表現は置いておいても、性的な表現がちょいちょい作品の中に登場するのは事実だ。個人的には、そうしたシーンはあまり好きではない。というか、かなり苦手だ。モラル云々ということより、映像的に思い浮かべたくないというのが理由だ。純粋に嗜好の問題である。映画でも、ドラマでも、性的な描写のある作品は基本的に観たくない。仕方ない場合は、早く終わって欲しいなと願いつつ観る。芸術として必要な描写という主張もあるだろう。必要なら必要で構わないのだが、やはり個人的にはできるだけ見たくないと思ってしまう。村上春樹氏の短編小説にはほとんどそういったシーンは出てこないので、このブログでも頻繁に取り上げている。ヘミングウェイもほとんど性描写がないので安心して読める。

個人的な好き嫌いは別として、「下品図書」として販売を禁止するという措置はどうなのだろう?香港はカオスな感じで、そのあたりは寛容なイメージがあるが。アンチ・ハルキストがモラルを振りかざして取り締まったのだろうか。(あくまで勝手な憶測) 村上作品には確かに性的な表現は多いかもしれないが、下品とか野蛮とかとは違うし、荒れていないし、卑しいわけでもなく、反社会的でもない。この程度で発禁にすると世の中は息苦しくなり、そのエネルギーは裏へと流れていくことになるのではないか。理屈でなく感覚的に判断するなら、「下品図書」は行き過ぎという印象だ。

こういう問題は線引きが難しい。風紀の取り締まりが厳しく整然としたストイックな世界とある程度自由で雑多だが活力のある世界、どちらが健やかな社会かと問われると少し考えてしまう。

「とんがり焼の盛衰」 村上春樹

「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」 村上春樹