リフティング中年のグリット力。

リフティング中年のグリット力。

近所の住宅街で、リフティングの練習をしている中年男性をよく見かける。40代後半くらいだろうか。白髪混じりの短髪でがっしりした体格、いつもサッカーのユニフォームを着て、自宅前で黙々と練習している。彼はおそらく、リフティングの練習のためにユニフォームに着替えているのだろう。(根拠はないが)

私はサッカーに疎いので(現在の日本代表の選手を一人も言えないレベル、NFLの全32チームは言えるけど)、どこのユニフォームかわからないが、サッカー愛は伝わってくる。

毎日そのあたりを歩くわけではないが、何度もリフティング中年に遭遇した。土日などは一日中やっているの?というくらい。春、夏、秋、そして冬。真剣な表情がいつもそこにあった。

難易度の高い技に挑戦しているのだろうか。ピタッとボールを足の甲に乗せ、クルッと脚を回して、目にも止まらぬクイックな動きをした後、反対を向いて後ろ足で…みたいなやつだ。(伝わりましたか?)

彼はいつかその技をマスターするだろう。そしてさらに難しい次の技に挑戦することだろう。石の上にも三年。グリット力で一つ一つクリアしていくに違いない。

私ははじめ「何のためにやっているの?」とシニカルに眺めていたが、今では「今日も頑張っているね」という応援する気持ちへ変わった。意味など後から見えてくるものだから、今はリフティングに没頭してほしいと思っている。

晴れの日も小雨の日も粘り強くコツコツと、その先で手にする華麗な妙技。「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」と言ったのはイチローだが、勝つ人は例外なくグリット力が高い。それはプロでもアマでも同じで、リフティングでも、勉強でも、ゲームでも同じだろう。

淡白な人間は負ける。感性で勝負する天才やひらめきが武器のファンタジスタ、そういうスタイルでは一発屋にしかなれない。継続は力なり、そのシンプルな概念に惹かれる。

今も街灯の下、彼はユニフォーム姿でボールを蹴っているのかな。