『午後8時の訪問者』 ダルデンヌ兄弟

今回は、観賞後に読書欲が爆上がりした映画の話。
今更感があるが、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの兄弟が監督した『午後8時の訪問者』をサブスクで観た。(日本での劇場公開は2017年)
ダルデンヌ兄弟については説明不要かと思うが、「ダルデンヌって、だれでんぬ?」という人もいるだろう。(どうして面白くないとわかっていて書いてしまったのだろう…)
この兄弟を一言で説明するなら、社会問題を抉るカンヌ映画祭受賞しまくりのベルギーの巨匠だ。
『午後8時の訪問者』については観た方も多いだろう。私は暗いサスペンスくらいのイメージしか持っていなかったが、どっこいこれが実にハードボイルドな探偵もので、106分全編まるまる没入できた。もっと早く観れば良かった。劇場で観ておけば良かった。
ストーリーはこう。
診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに女医のジェニーは応じなかった。
その翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかる。それは診療所のモニターに収められた少女だった。
少女は誰なのか?
何故死んだのか?
ドアベルを押して何を伝えようとしていたのか?
あふれかえる疑問の中、亡くなる直前の少女の足取りを探るうちにジェニーは危険に巻き込まれていく。
彼女の名を知ろうと必死で少女のかけらを集めるジェニーが見つけ出す意外な死の真相とは―。
なかなか設定は面白いが、謎で引っ張る娯楽作品というより、人種問題など強者と弱者の格差を描いた骨太な社会派映画だ。主人公の若い女医が、無愛想で洒落っ気がなく、ラギッド感が漂っていて良い感じ。全編まったくBGMが無く、常に手持ちのカメラが微妙に揺れていて臨場感がある。登場人物はほぼ全員無口。派手な演出は一切なく、どんでん返しもなく、大スターも出演していない。それでも、引き込む力はかなり強い。予告からもそれが伝わると思う。
私はこうやって絶賛しているが、ネット上の評価はそれほど高くないようだ。おそらくはハリウッド的な過剰演出を求める人がこの地味さに低評価を付けたためだろう。まあ、そういう人が一定数いるのは仕方ないね。
この映画を見終わった後、私の中でハードボイルドブームが再燃している。近々、チャンドラーの名短編『待っている』の記事をアップしようかと思っている。(この短編を好きな人って多いでしょ?)
グダグダしてきたのでここらで締めますね。とりあえずAmazonプライムで48時間視聴できるので、もう1回観ておこうかな。
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