村上春樹がノーベル代替賞を辞退
- 2018.09.19
- 村上春樹

このニュースはちょっと興味深い。
選考関係者が起こした不祥事によって、今年のノーベル文学賞は発表が見送られた。そこでスウェーデンの「ニューアカデミー」という団体によって代替文学賞が急場凌ぎ的に設けられたのだが、村上春樹氏がこれを辞退する意向を伝えたそうだ。最終候補の4人に残っていたが、そこから抜ける形となった。
「メディアからの注目を避け、執筆活動に集中したい」というのが辞退理由で、メールで伝えたらしい。ニューアカデミーとしては本人の意志を尊重するしかなく、残った3人から選ぶことになった。(発表は10月)
実は、この辞退理由が賛否両論を呼んでいる。いちいち騒がれるのは辛いと思うが、スター作家なのでそれも仕方ないだろう。
代替賞をもらうと本当のノーベル賞が遠のくと考えたのだろうとか、「メディアからの注目を避け、執筆活動に集中したい」のなら他の賞も辞退しないとおかしい、というのが騒がれている主な理由だ。
春樹氏の本音はわからないが、代替賞より正規のノーベル賞が欲しいと考えても不思議ではない。あのポジションにいたら、多くの人はそう思うだろう。断る時のマナーとして「代替賞なんて要らない」とも書けないわけで、「今、忙しいから」っていうのも常套句だと思う。
大きな賞が欲しい、という欲が透けて見えるとちょっと残念な気はするが、それも勝手にまわりが言っているだけで、当の本人がどう考えているのかはわからない。サルトルのようにノーベル賞を断ることだってないとは言えない。
ノーベル賞って、誰がノミネートされているのか実はわからない。(確か50年後に公表) 村上春樹が最有力とよく言われるが、スェーデン・アカデミーとはまったく関係ないブックメーカーの予想にすぎない。日本人作家では三島と谷崎が候補になっていたようだが、結局は受賞していない。トルストイは宗教批判をしたとかで受賞できず、作家たちが抗議行動を起こしたそうだ。ざっと歴代の受賞者を眺めると、やはりボブ・ディランがかなり浮いている。
観念的と言える選考基準なので、選考員たちの気持ち一つで決まるのだと思う。獲れる獲れない、受ける受けないは個人的にはどちらでもよいのだが、さすがと思わせてくれる気概あるかっこいいリアクションを期待してしまう。
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