短編小説 ベストワン

短編小説 ベストワン

これまで、このブログで約150篇の短編小説に関する記事をアップした。一年半で150記事は少ない気もするが、腰が重く飽き性の自分にしてはまずまずの数字だろう。なにより継続できていることが嬉しい。(「継続は力なり」って改めて良い言葉だと思う。実践が難しいので特権的な喜びが得られる)

このブログには広告バナーが貼られている。「スポンサーリンク」と記載されている箇所で、それを閲覧者が1クリックすると数十円の報酬が私に発生する仕組みになっている。

「どうせ小銭欲しさにテキトーな記事を書いているのさ。中身はコピぺだらけだろ」といううがった見方をする方もいるだろう。

でも、それは間違っている。実際には報酬などほとんど手にしていない。たまに数十円という程度で、小学生だって喜ばない額である。

記事を書いている自分が言うのもなんだが、このブログの訪問者の多くはリテラシー(読み書きの能力)が高い。知的な人たちは警戒心が強く、バナー広告を安易にクリックしたりはしない。私だって、そもそも皆さんがクリックしまくることなど期待していない。このブログを副業として贅沢に暮らそうなどとは1ミリも思っていない。報酬のためのブログなら、もうとっくに閉じている。

私は短編小説が好きで、自分でもいくつか作品を書き溜めている。好きな短編小説についてもっと詳しくなりたいし、もっと刺激を受けたい。野球好きの少年がグローブとボールを肌身離さず持っているように、いつも戯れていたいと願っている。

まあ、そんな思いで書いているから、いわゆるアフィリエイトブログ的な胡散臭さやあざとさはこのブログにはないと自負している。(あくまで自負だけど) だからこそ、リピート訪問してくださる方がいるのだと思っている。

前置きが長くなったが、これまでに紹介した150作品の中で今日はベストワンを決めようと思う。オススメとかでなく、パーソナルなベストワンを。

ベストワン短編

灰色の輝ける贈り物 アリステア・マクラウド

以前にもオススメ短編として取り上げたが、舞台も物語もタッチも申し分ない。マクラウドは玄人好みの地味な作家かもしれないが、私にとってはとても重要な存在だ。実直すぎて辛く思えることがあるものの、大事なものを持っていると感じる。「灰色の輝ける贈り物」は金字塔で、まるで良質な映画を観たかのように瑞々しい映像として記憶に残っている。その映像喚起力は凄い。感動と印象が強く残っているため、時間を置いてからでないと読み返せないが、これから何度も再読することになると思う。

ワーストワンも決めようかな。でも、そういうネガティブなことはやめておこうか。綺麗なことばかり書いていてもな…。ということでワーストワンを告白。

庭の中で グレイス・ペイリー

クオリティが低いとかではない。単に好みに合わないのだ。つまり、相性が悪いのだと思う。他にも相性の悪い作品はあるが、「庭の中で」をワーストにした理由は、一言でいうなら、わかりにくい。わかりにくいから、途中で読む気が失せてしまう。理解できない読者が悪いのか、理解できないように書く作家が悪いのか。私は作家など全然偉くないと思っているので、伝える姿勢や退屈させない配慮は大前提として必要だと考える。アートだから難解でも価値があるというのなら、アートは私には不魅力なものと映る。グレイス・ペイリーの他の短編には響くものもあるので、もちろん全否定はできないが、この作品はちょっと口に合わなかった。

好きな短編、嫌いな短編をとおして、「シンプルでわかりやすく力強い作品が好き」という自分の好みがより明確になった。こうした明瞭化や顕在化もブログをやっているおかげだとつくづく思う。

灰色の輝ける贈り物 (新潮クレスト・ブックス)