WESTERN STARS Bruce Springsteen

WESTERN STARS   Bruce Springsteen

改めてブルース・スプリングスティーンのニューアルバム「WESTERN STARS」の歌詞を聞き直している。(読み直している?まあ、どっちでもいいか) 愛するものを失った孤独な男の歌ばかりだ。喪失感、閉塞感、絶望感。行き場のない辛さに胸が締めつけられる。
数年前に書き始め、しばらく棚上げし、相応しい時期を待ってリリースした曲が多いとのこと。トランプ政権下のアメリカで「時事的な作品づくりに興味が持てない」という思いがあってか、政治的な歌はない。

 

これまでのブルースとは違う、という声も聞くが、違うのはサウンドの方。歌詞はいかにもブルースらしいと私は思う。
本人が語る通り「広がりのあるシネマティックなサウンド」ではあるが、「宝石箱のようなアルバム」という表現にはどうも頷けない。これほど暗い、辛い、切ない宝石がどこにあるの?と思ってしまう。宝石の輝きというのは、底知れぬ闇と表裏ということなのか。。。
「WESTERN STARS」は、美しい風景を舞台に虚無を描いたヘミングウェイ作品がそうであるように、豊かな音と重苦しい詞のコントラストが印象的なアルバムだ。
あらためて思ったのは、ブルース•スプリングスティーンは「絶望の人」だということ。ほんの僅かな希望は残っているので厳密には絶望ではないかもしれないが、闇の中に立っているから聴く人の心を捉え、動かす力があるのだと感じた。

話はちょっと変わるが、昨日、樹木希林を特集したテレビ番組を観た。この人も「絶望の人」だと感じた。世の中に楽しいことなんてないから、せめて面白がろうとしているように見えた。とても醒めていて、最後の最後まで自分自身を雑巾みたいに使い切ろうとした人ではないだろうか。

樹木希林はこう言った。

「私の話で救われる人がいるって?それは依存症というものよ、あなた。自分で考えてよ」

確かに。自分のことは自分でどうにかしないとね。