「略奪品」 カート・ヴォネガット

「略奪品」 カート・ヴォネガット
ドイツ軍から解放された捕虜のアメリカ兵たちが、民家から金品を盗む略奪者になる。少年が愛情を注いで育てたウサギさえも…
といった戦場におけるモラルを扱った短編だ。(どう考えても短くまとめすぎだろ)
人間にとって大事なものは何か?忘れてはいけないものは何なのか?
それをクールな観察者の目で描くのではなく、斜めからシニカルに描くのでもなく、裏側から過激に描くのでもなく、実直なまでに真っ直ぐに押し出してくる。
ヴォネガットは自身の戦争体験をベースにいくつかの短編を書いているが、絶滅危惧種と呼べるほど温かい描き方をする道徳的作家だ。(あくまで私のイメージだが) この作品でも、そのあたりはかなりベタな印象を受けた。
正直、そうした優しさにいささか胃もたれした。良心が前面に出てくる作品は、なんだか読むのがシンドイ。もちろん巧いし、ホッとできる安心感もあるし、描写は素直でとても理解しやすい。謎や比喩の多い小説のようにモヤモヤさせられることもない。ヴォネガットのブレない倫理感に文句のつけるつもりは無いのだが、その温かさに軽い拒絶反応が出てしまった。
日本にも熱烈なファンを持つ作家なので、批判的な感想に腹を立てる人もいるだろう。私が偉そうに言うことではないが、殺伐とした今の世の中で、こうした温度のある作品はとても存在価値が高いと思っている。ただ、ヴォネガット作品は甘いコーヒーのようで、美味しいことは美味しいが、少しだけ糖分が多いなと個人的には感じる。
ブラックコーヒーが好きなのは、私の心がブラックなせいだろうか。この質問の意味がよくわからないが、このまま書き続けると自虐的になっていきそうなので今回はここまで。(雑な締め方でスミマセン)