立ち食いそば屋にて

立ち食いそば屋にて

今回は小説の話でなく、立ち食いそば屋で見かけた正直なお婆さまのことを書こうと思う。

*ここから先、心温まる話ではないのでご注意ください。

このお婆様、御年80歳というところだろうか。とても元気で声が大きい。

店に入ってくるなり、「日本はもうおしまいだよ」と店のおばさんに向かって話しだした。

「気候はおかしいし、地震は多いし、大雨は降るし、日本はもうおしまいだね。もうすぐ東京にも地震がくるよ。そしたら、みんな死ぬから」

「こわいねぇ」と調子を合わせる店のおばさん。

「でもね、アタシは今日まで好き勝手に生きてきて、こうして長生きできたからね、もういつ地震がきて日本がなくなってもかまわないの」とこのお婆さまはおっしゃる。

さらに強い調子でこう続ける。

「大地震で死ぬのは有り難いのよ。だってさ、独りで死ぬのは嫌だもん。そりゃそうでしょ、あんた。大勢で一緒に死ぬなら寂しくないからね」

私は横でそばを食べながら唖然として言葉を失った。80年生きてきてこういう考えに辿り着くとは、腹がたつのを超えて呆れてしまった。昔の道徳教育がダメだったのか、信心がないせいなのか、いろいろ考えさせられた。

店を出てからも、この婆さんの言葉がしばらく頭から離れなかった。婆さん個人の人間性の問題ならそれほど気にはならないのだが、今の高齢者たちをどこか象徴しているような気がしてしまったのだ。この婆さんはただ正直なだけで、他の高齢者だって似たようなことを考えているのではないだろうかと。もちろん、そうじゃない人もいるだろう。でも、楽しそうに趣味や道楽に生きている高齢者たちを見ていると、この婆さんと本質的に変わらないと思えてくる。(何度もいうが、尊敬できる高齢者もいる)

私自身いくつまで生きられるのかわからないが、将来、もし健康な身体で老後を迎えることができたなら、生涯現役として働きたいと心から思う。それが叶わないのであればボランティアに生きたい。

今、元気に人生を謳歌している高齢者は、私にとってはある意味で貴重な気づきをくれる反面教師と言える。まあ私の意見に反論もあろうかとは思うが、どこの馬の骨とも知らぬ男の戯言と流していただければと思う。

今日の記事はなんだかチェーホフっぽい、・・・かな。