「PAPA & CAPA ヘミングウェイとキャパの17年」 山口淳

警告:今回は罵りの嵐になりそうなので、健やかな記事や愉快な記事を求めている方は、ここで読むのをやめてください。

「PAPA & CAPA ヘミングウェイとキャパの17年」は、20世紀を代表する文豪と報道カメラマンの交流の記録である。あまりの面白さに、息切れするほどのスピード(暴走気味)で一気に読み終えた。

とにかく興奮を止められないほどすべてのエピソードが興味深く、ある意味で暴露的だ。ヘミングウェイの実像に迫っているように思えた。

ヘミングウェイとキャパ。二人とも基本的に目立ちたがり屋で、野心家であり、英雄気取りで、アルコール依存で、懲りないナンパ師である。二人は会うたびに大酒を呑み、馬鹿騒ぎをし、そして戦争ごっこに没頭した。人生を満喫しようと名声にもの言わせ、我が世の春を謳歌しつづけた。

こんなエピソードが紹介されている。

「ねえ、パパ。恋するたびに熱くなって、くっついたり、別れたりするのは、大人のすることじゃないよ」とキャパが揶揄すると、ヘミングウェイはブチ切れてシャンパンのボトルをキャパに投げつけた。幸運にも外れてドアに当たって砕け散った。

スタインベックに対しても、ヘミングウェイは酔って野蛮な振る舞いをする。スタインベックは我慢できず立ち去ってしまう。キャパは二人の文豪の間をちょこまか動き回っていた。

ヘミングウェイは、好戦的で腕力にものを言わせる暴力的な行為も多い。この本の著者は、若い頃の繊細な精神は、成功後に虚栄心や慢心へと変化してしまったと書いている。マッチョを演じ、時に理不尽に人を傷つける。平気で恩を仇で返す。他のノンフィクションに書かれていたことだが、戦場において人を殺すことにも抵抗感がなかったようだ。。。

読書中、私は自分の中に湧き上がってくるある思いに気づいた。

ヘミングウェイは芯のない俗物…。

アーネスト・ヘミングウェイという人間の利己性はよく知っているつもりでいたが、「PAPA & CAPA」を読むうちに、その身勝手な一面ばかりが目立ち、嫌悪感が強くなっていった。作品の清澄さには惹かれてきたが、それすらどうでもよくなりそうなほどに。

もうこのへんでやめておこう。ヘミングウェイがスターになれたのは押し出しの強いあの風貌と、世界を駆け巡った行動派のイメージなど虚飾によるものが大きい。もちろん、それだけではないが。

今回はかなり辛辣なことを書いたので気を悪くした方もいるかと思う。でも、私もそれなりにショックを受けている。ヘミングウェイが自分の中で終わりそうな気さえする。(少なくともしばらくは名前も見たくない)

ただ、努めて冷静に見れば、この本に書かれているエピソードの捉え方には注意が必要な気もする。気取った権威主義への抵抗、型にはまった退屈な生き方への嫌悪、母親に植え付けられたコンプレックスの裏返し、双極性障害による気分の波、そうした複雑な要因が絡み合い、その発露としての奔放な振る舞いだと見ることができなくもない。

このように人生を謳歌したらそりゃ楽しいだろうという羨望の対象、このように利己的に生きてはいけないという反面教師、その両方のヘミングウェイを感じた一冊だった。

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