「夢の検閲官」 筒井康隆

「夢の検閲官」 筒井康隆

私は筒井康隆の熱心な読者ではなく、かと言ってアンチでもない。奇想天外さとか実験性とかそういうものにあまり惹かれないため、これまで積極的に手に取ることはなかった。

「夢の検閲官・魚籃観音記」という短編集の表題作であるこの一遍は、息子を亡くした母親が安眠できるよう夢の入り口で取り締まる検閲官の話だ。クオリティも完成度も高い傑作だと思う。

重い題材ではあるが、笑いの要素も含んでいる。出先で読んでいたので、声を押し殺すのに苦労した。でも下品さはなく、毒素も少ない。面白いだけで終わらず、悲しくて、切なくて、そしてほろっとまでさせられる。ラストで泣きそうになってしまった。まあ、ある意味で“らしくない”とも言えるが、筒井作品と疎遠になっている人も新鮮に楽しめる一遍ではないだろうか。

同じ短編集に「馬」という作品があるのだが、これは抱腹な一遍で、馬か人間か区別がつかないという男の話だ。なにそれ?と思うだろうが、あらすじをだらだら書くのは野暮というもの。奇想天外な筒井ワールドなので、読んで感じるしかない。俗っぽくて、不条理で、良い意味で品がなくて、とにかく最高なのである。それにしても、なんと奇天烈な発想なのだろう。村上春樹氏が筒井康隆氏を好きな理由が、なんとなくわかったような気がした。