「父と子」 アーネスト・ヘミングウェイ

「父と子」 アーネスト・ヘミングウェイ

38歳になったニコラス・アダムズ(自伝的主人公)が、眠っている幼い息子を助手席に乗せ、ウズラ狩りを想像しながらクルマを走らせている。幼少期の記憶が蘇ってくる。父の特徴的な目、どうしても好きになれなかった体臭、釣り、狩猟…。父は遠方まで捉える動物的な視力を持っていたが、神経質で感傷的で酷薄(むごい、残忍)な人間だった。趣味の喜びを教えてくれたことには感謝しているが、性的なことはまるであてにならなかった。

「父と子」 はこうした回想を通して、未だ整理できない父親への複雑な心情を描いた短編だ。

この短編にはヘミングウェイの性格検査に役立ちそうな情報がたくさん詰まっている気がする。でも、ネットで探しても評論はほとんど見つからなかった。(あまり人気がない短編なのかな)

個人的な感想としては、やや読みにくいという印象を受けた。多種の感情が入り混じり、回想シーンもやや奔放にジャンプしていくため、ちょこちょこ読書の流れが止まってしまう。えっ、場面が変わったの?今話しているのは誰?といった感じ。もう少し構成がシンプルなら、スムーズに感情移入することもできただろう。まあ、私のリテラシーが低いだけかもしれないが。

ラストの方で、助手席の幼い息子が目を覚まし、どうしてお爺ちゃんのお墓参りに行かないの?とニックに問う。その会話に、ニックが父親に抱くすっきりしない胸のうちが滲み出ている。どこかで距離感を埋めたいという気持ちも同時に読み取れる。複雑な感情を描いているから、わかりにくい小説になったのかな。

いや、でも、なんか気づけていないことがある気もする。解けない詰将棋みたいでもやもやしてきた。。。

父親から息子に「伝えられること」と「伝えられないこと」、そのあたりがテーマかもしれないが、違うかもしれない。親子の話と性の話がリンクしているので、あまり気持ち良い読書にはならない。まあ、私だったら絶対書かない題材だ。

ヘミングウェイは、小説にすることでわだかまりを清算するタイプの作家なので、自己救済のために書く必要があったのだとは思う。原題はFathers and Sonsと複数形になっているので、継承や普遍性を意識していたのかもしれないが、正直なところ共感するものはあまりなかった。ヘミングウェイはとてもナイーブな人なので、偏った執着に縛られていたのかもしれない。

ということで、今回の記事は霧が晴れぬままに終わりとする。全然深堀りできていないけど、今日の脳の調子ではこれ以上は解読できそうもない。この短編に関しては、またいつかリベンジしようと思う。