「ヘミングウェイで学ぶ英文法」 倉林秀男 河田英介

「ヘミングウェイで学ぶ英文法」 倉林秀男 河田英介

「ヘミングウェイで学ぶ英文法」 というタイトルが付けられているが、「英文読解で学ぶヘミングウェイ」とも言える。

Cat in the Rain(雨の中の猫)、A Day’s Wait(死ぬかと思って)、 The Sea Change(海の変化)、 Hills Like White Elephants(白い象のような山並み)、A Simple Enquiry(簡単な質問)、The Light of the World(世の光)の6短編を教材として使用している。*括弧内は新潮文庫版の邦題

失礼に聞こえるかもしれないが、思っていたよりもずっと内容が濃く、そして深く、たくさんの気づきを得ることができた。著名な大学教授たちが書いているのだから質が高いのは当然とは思うが、読む前は「ヘミングウェイで英語の勉強?どうせキャッチーな企画ものでしょ?」と穿った見方をしていた。

でも、まったくその予想は外れた。特にA Day’s Waitの章は勉強になった。このブログの「死ぬかと思って」の記事をすぐに加筆修正したほどだ。

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「ヘミングウェイで学ぶ英文法」は英文読解問題集のスタイルを採っている。

ヘミングウェイの短編の原文を掲載し、

「このタイトルにはどのような意味があるのか?」

「副詞を文頭に持ってきた理由はなにか?」

「過去完了が使われているのはなぜか?」

といった問いがいくつも用意されている。文法の知識だけでは解けない問題も少なくない。ヘミングウェイの狙いを見抜く必要がある。重点を押さえた問題を解き進めていくうちに、漠然としていた作品のイメージが鮮明なものになっていく。

A Day’s Wait(死ぬかと思って)では、一つ大きな発見があった。

新潮文庫版「死ぬかと思って」(高見浩訳)の締めの一文は「どうでもいいようなつまらないことにも、息子は歓声をあげるようになった」である。

ところが「ヘミングウェイで学ぶ英文法」では「どうでもよいことにもすぐに泣くようになった」と訳されている。

なんと真逆の訳なのだ。

原文を見てみよう。

he cried very easily at little things that were of no importance.

直訳すると確かに「泣いていた」となる。死の恐怖から一気に解かれた少年が、感情をコントロールできずに泣いているのだとこの本では解説している。

もちろん高見訳が誤訳というのではなく、「制御不能になって泣きまくっている」という感情を「解放の喜び」と解釈しているのだ。

どちらが正解ということではなく、その違いが興味深い。

 

ヘミングウェイを原文で読みたいという欲求が私の中でどんどん強くなっているので、「ヘミングウェイで学ぶ英文法」は大きな助けになりそうだ。

 

ヘミングウェイで学ぶ英文法

ヘミングウェイで学ぶ英文法 2

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