「陳腐なストーリー」 アーネスト・ヘミングウェイ

1926年初出、1927年に刊行された短編集「男だけの世界」に収められた文庫にして3ページ半の掌編。原題はBanal Story。banalは「ありふれた」とか「つまらない」という意味である。

この短編、かなり独特の文体であるため、「ありふれて」はないのだが、おそらく多くの人にとって「つまらない」だろう。「つまらない」というと語弊があるが、とにかくわかりにくい。

なぜ、わかりにくいのか?

アメリカで、20年代に売れていた「フォーラム」という雑誌がある。それをパロっているため、予備知識がない人にはさっぱり理解できないのだ。私も3回ほど再読してみたが、結局よくわからなかった。断言はできないが、「フォーラム」に象徴される当時のアメリカ文化の陳腐さを冷笑しているのではないだろうか。

物語の最後にマヌエル・ガルシアの死に関するトピックスが取り上げられているが、ヘミングウェイが1923年にパンプローナで大大大感動した闘牛士であり、「敗れざる者」の主人公の名前にしたほど入れ込んでいた人物である。知人らと闘牛観戦の旅をする長編「日はまた昇る」も「陳腐なストーリー」 と同年の1926年に出版されているので、かなり著者の中で闘牛熱が高まっていた時期と思われる。

理解できてない私が言うのもアレだが、ヘミングウェイのシニカルな性格が前に出ているので気持ち良く読める短編ではない気がする。

これ以上の解題は、今の私には厳しい。正直、お手上げである。でも、「陳腐なストーリー」について書かれた書評はほぼゼロなので、この程度でも褒めてほしい。(褒められて伸びるタイプなので)

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