「特別な週末」 トム・ハンクス

「特別な週末」 トム・ハンクス

今更感があるので、あまり大きな声で言いたくないのだが、今回取り上げる短編の著者はトム・ハンクス。そう、「フォレスト・ガンプ」や「プライベート・ライアン」のトム・ハンクスだ。「特別な週末」はデビュー短編集「変わったタイプ」に収められた一遍で、私は名優というバイアスを外してフラットな気持ちで読むことにした。

主人公は、両親が離婚した少年。父親に引き取られ、新しい母ができ、塞ぎがちな毎日を送っている。著者自身の両親も離婚しており、父親の元で育てられている。母親がウェイトレスという設定も同じなので、完全に自伝的小説と言えるだろう。10歳の誕生日を迎えた週末、少年は実母と二人で「特別な週末」を過ごせることになった。男たちが見とれるほど美しい母とオープンカーでドライブし、母の恋人が操縦する自家用飛行機にまで乗せてもらう。眩いばかりのまさにスペシャルな時間を過ごした。

という、ちょっぴり感傷的で心温まる作品だ。少年に悲壮感がないので、安らかな気持ちで読めた。

とは言っても、離婚は残酷なもので、昨日まで当たり前に暮らしていた家族という形態を、呆気なく消滅させてしまう。二度と元には戻れない。子どもには選択肢はなく、現実をただ受け入れるしかない。

トム・ハンクスはこの作品で古き良きアメリカの空気を再現したかったのでなく、子どもが持つピュアネスを表現したかったのでもなく、数少ない母との記憶をただ作品化したかったのではないだろうか。著者にとって、母親と二人で過ごす時間は非日常であり、短編のタイトル通り特別な出来事なのだ。(あとがきを読んでいないので、的外れなことを書いていないかちょっと不安だが、、、)

著者が誰か知らず読んでいたとしても、「特別な週末」は良い短編だと感じたことだろう。自分が本当に知っていることを書いているから、作り話の薄っぺらさがない。申し訳ないが、ここまでのクオリティは想像していなかった。

いつものことだが、他の方のレビューにも目を通した。もっと多様な声があって自然だと思うのだが、似たり寄ったりの感想が多かった。人と違う意見を持つことが怖いのかな。あらすじをコピペするならまだわかるが、感想のコピペのように思えてしまった。(少数だが自分の言葉で書いている人もいる)

私は、どう思われても構わないので、これからも堂々と自分の意見を書くつもりだ。バシッと宣言したところで今回はおしまい。