ヘミングウェイとフォークナーの舌戦

ヘミングウェイとフォークナーの舌戦

二人のノーベル賞作家、ヘミングウェイとフォークナーによる有名なバトルがある。ウェブ上でもよく紹介されているのでご存知の方も多いかと思う。

どのようなやりとりかというと・・・

 

フォークナー「彼は読者に辞書を引かせるような単語を使ったことが無い。」

ヘミングウェイ「馬鹿フォークナーめ。大きな感動が大仰な単語から生まれると本当に思っているのか?」

 

というもの。確かにキャッチーで面白いが、これを読むとヘミングウェイが完全にキレているという印象を受ける。

元の英文を見てみよう。

Faulkner:He has never been known to use a word that might send a reader to the dictionary.

Hemingway:Poor Faulkner. Does he really think big emotions come from big word

Poorは「馬鹿!」という口汚い罵りではなく、「可哀想な」とか「哀れな」というニュアンスで、big wordは「大仰な単語」というより「長ったらしくて難解な言葉」か「もったいぶった言葉」の方が近いかと思う。

で、訳し直してみると・・・

 

フォークナー「彼は、読者に辞書を引かせる言葉を使ったことがないね」

ヘミングウェイ「哀れなフォークナー。難解な言葉から大きな感動が生まれると、彼は本気で考えているのか?」

 

伝言ゲームと同じで、人から人へ伝わる際に話のニュアンスが変わってしまうことはよくある。大抵は尾ひれが付いて誇張されていく。ヘミングウェイは腹を立てているもののキレてはいない。キレられることは多かったが、キレたという話はあまり聞かない。そういえば、作家でキレる人は少ない気がする。「キレる」というのは、言葉で表現できなくなった時に取る行動なので、言葉に生きる人間がそれをするのは御法度という気もする。

それにしても、このヘミングウェイとフォークナーのやりとり。単なる口喧嘩ではなく、それぞれの表現スタイルの核心に迫った内容だと思う。

 

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